「結婚?焦らなくてもそのうちできるっしょ」と完全に結婚をナメていた私が、「今のままじゃ、一生結婚できない!」と気づいたのは2010年。カラオケでAKB48の『ヘビーローテーション』を歌いまくっていた31歳の夏だった。
ふと気づけば1年以上彼氏がいない。というか出会いすらない。友達の既婚率が上がっていくのと反比例して、合コンのお誘いもめっきり減ってきた。仕事仲間や近所の飲み友達など、身近にメンズがいないわけではないけれど、狭い輪の中から恋愛対象を発掘するのは破局した場合の面倒やリスクが大きいから気が進まない。
一番の問題は交際が2カ月以上続いたことがないという事実。しかも、ほぼ「思っていたイメージと違う」という理由で突然フラれる。どんなイメージだよ!? という内容は人により様々なので割愛するけど、原因はたぶん、出会ってからつきあうまでの期間が短いこと。思い返せば大体が1~2回デートして、場の雰囲気や勢いでつきあう、というインスタントな流ればかり。こんなんじゃお互いの本質が見えるはずがない。
考えれば考えるほど自分のアホさにため息が出る。だけど、じっとしていても何も変わらない。この反省を生かして次こそ結婚につながるような恋をしよう。そのためにはまず、有力な出会いを探さねば!
ということで、真っ先に目をつけたのが婚活パーティー。“婚活”という名がつくからには、結婚願望のあるメンズがゴロゴロいるに違いないと思ったのだ。結婚というゴールを目指すなら、同じ目的を持つ相手を探すほうが早いしな。よーし、婚活やったるで!
手早くネットで情報を調べて申し込んだのは、婚活市場では結構メジャーなA社主催のパーティー。確か「20~30代限定☆恵比寿のおしゃれ居酒屋でカジュアルな出会い」という感じのネーミングで、参加費は女性1,000円、男性5,000円。気軽に参加できそうなお値段と雰囲気だし、初心者の私にピッタリじゃん。
と、意気揚々と婚活デビューを飾ったわけだが、当時の感想をひとことで言うと、品定め感ハンパねぇ……という感じ。
雰囲気こそは合コンと大して変わらないけど、さすが婚活、質問のグイグイ感がえぐい。というか、まるで面接のよう。ただでさえ自己アピールが苦手なうえ、婚活にも慣れていないからか、妙に緊張する。おかげでビールがめっちゃ進む(笑)。
酒の力で緊張がほぐれたところで、「みなさん、スラスラ話せてすごいですね」と聞いてみると、参加男性5人のうち3人はこの会の常連だという。女性側も私を含む5人中、2人がリピーターだった。
え、そんなに何回も通うものなの?
確かに周回したほうが好みのタイプに出会える確率は上がる。けど時間もお金もかかるし、目が肥えて逆にハードルが上がったりしないのかな? そもそも相手に求める条件が厳しいとか? でも真剣に婚活するからこそ、条件に厳しくなるのも当然だよなぁ……。
ぐるぐる考えるうち、「面接みたい」と感じた居心地の悪さの正体がうっすらと見えてくる。常連の方々が探しているのは、自分にとってドンズバな相手のみ。それゆえ合コン感覚でやってきた、にわかの私とは心構えも温度感も違う。とどのつまり私は、婚活に対する真剣味が全然足りていなかったのだ。
それでも奇跡的に2人と連絡先を交換することができて、後日デートすることに。まだ全然好きとかそういう感情はなかったけど、せっかく出会ったのだから相手を知ってから考えようと思ったのだ。
彼は神奈川在住の公務員で年齢は30代前半、参加者の中でもきっちりかっちりした印象の人だった。メールの文面からも真面目な人柄を感じる一方で、ちょっとした不安も感じていた。
それは物事に対して細かそうという部分。デートの約束をした翌日に早速プランを送ってくれたのだけど、私が最寄り駅から乗る電車の時刻をはじめ、当日のすべての行動予定が分刻みで書かれていたことに、ものすごいプレッシャーを感じてしまったのだ。
もちろん計画自体はすごくありがたかった。けど、自他ともに認めるマイペースで気分屋の私が、相手のペースに合わせられる自信がない。どうしよう……。一晩悩んだ末に、行けばなんとかなるだろうと思い直し、「ありがとうございます!楽しみです♡」と返信。
が、返ってきたのは「返事がないから、もう別の予定を入れました」というメール。えぇぇ、そんなにすぐ返さなきゃダメ? 遅れた私が悪いとはいえ、これはさすがに合わせきれない……。ああ、こういう基礎的な部分で、「自分が合わせればなんとかなる」と妥協しちゃダメだな。過去の恋愛でも合わせられた実績がないんだから、自分を過信するのはやめよう!
連絡先を交換したもう一人は、北関東出身、30代後半のぽっちゃりパティシエ。外見は好みじゃないけど、話も合うし気を使いすぎない人だったので彼とは2回飲みに行った。過去につきあったことのないタイプだったこともあり、「結婚するならこういう人がいいのかも?」ともちょっぴり思ったりもした。
だが、やはり無理だった。非常に失礼な話だけど、好みじゃなさすぎてキスできなかった。しかもキスされそうになった瞬間、露骨に引いてしまった。彼はしばし困ったようながっかりしたような顔をして、私のおでこにべたっとキスをした。そして新宿駅の改札の中に消えていった。以後、彼とはそれっきり。
もしかしたら好きになれるかもしれない、という感覚で婚活をするのは間違っているのだろうか? 「自分のタイプはこれ!」という婚活の条件をきっちり固めておけば、今回のような出来事で相手を傷つけることはないかもしれない。
でも、今はまだ自分が求める男性像がよくわからない。いきなり好みが変わる可能性だってある。だったら手探りでもいろんな人と会ってみるしかない。
だがしかし……。彼のデコチューが気持ち悪すぎて、婚活&恋愛に対する私の気持ちはポッキリと折れてしまっていた。やっぱ焦らないほうがいいんじゃないか? 婚活向いてないんじゃないか? 弱気になる心のどこかで「立て!立つんだ!!」と丹下段平が叫んでいる。しかし、私の気力は真っ白に燃え尽きたままだった――。