主人公のテルコ(岸井ゆきの)は、友だちの結婚式の二次会でマモちゃん(成田凌)と出会って恋に落ちますが、その恋は片想いでした。
マモちゃんから連絡があると、何処にいても何をしていても駆けつける。仕事もそっちのけ。テルコは完全に恋に振り回されてしまっている女性です。
そんなテルコを見ていると、なんてイタいんだろう……と切なくなりますが、好きな人に会えるなら、少しでも一緒にいられるなら、振り回されてもいい──テルコの行動は、片想いで苦しんだことのある人にはもの凄く響くのです。
テルコはマモちゃんのことが好き。でも、マモちゃんはテルコのことを恋愛対象としては見ていなくて──だったら気軽にデートに誘うなよっ! 家に泊めたりするなよっ! 勘違いさせるなよっ!って、映画を見ながら何度マモちゃんにイラッときたことか。成田凌が何ともいい具合にクズ男を演じていて、ハマり役なんです(笑)。
ただ、マモちゃんだけが悪いかというとそうとも言えない。彼もまた別の女性に片想いをしていて、ふり向いてもらおうと一生懸命なんです……。
誰かを好きになると、最初の頃はその人を想うだけで幸せを感じるものです。その人のことを少しでも知りたくて、同じ音楽を聴いたり、同じモノを見ようとしたり、その人に、その人の居る世界に染まりたいと思う。
そして、好きが増していくと欲望はどんどん膨らんで、相手にも自分のことを好きになってほしい、大切にしてほしいと願ってしまう──それが普通の恋愛感情だと思うんです。
テルコの場合は、好きな人に染まりたいというよりも、好きな人と同化したい、好きな人になりたいと思っている。なかなかの恋の闇です。
そこで、テルコ度チェックです(笑)。チェックが多いほどテルコの気持ちが分かるはず!
▢ 好きな人からの電話を何時間でも待ってしまう
▢ 今から会える?と言われたら何時でも何処にでも会いに行く
▢ 好きな人のことを考えると仕事が手につかない
▢ 恋愛が原因でクビになったことがある
▢ 言われてないのに好きな人の家の掃除をしてしまう
▢ どんな些細なことでも頼ってほしいと思う
▢ ダメなところも含めてその人のすべてが好き
▢ 好きな人が自分のことを好きじゃなくても好き
▢ 友だちが好きな人の悪口を言ったら反論してしまう
誰かを好きになると、その人のことしか見えなくなって、世界がものすごく狭くなって、その人が最優先の思考回路になる。というのは少し大袈裟かもしれないですが、だいたい恋って何なの? 付き合うってどういうことなの? という疑問を含めて、人を好きになるって残酷だよね、片想いって苦しいよね、といった恋にまつわる感情が、この映画にはぎゅっと詰まっています。
恋愛に正解がないように、きっとこの映画をどう捉えるのかも人ぞれぞれ違うはず。「テルコの気持ち理解できた?」「どうだった?」──と、女同士、恋人同士、誰かと語り合いたくなる映画です。
『愛がなんだ』
4月19日(金)テアトル新宿ほか全国公開
原作:角田光代「愛がなんだ」(角川文庫刊)
監督・脚本:今泉力哉
出演:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也、片岡礼子、筒井真理子、江口のりこ ほか
公式サイト:aigananda.com
ⓒ 2019『愛がなんだ』製作委員会