“女のたしなみ”を学べる映画の1本目は、1953年の映画『東京物語』です。監督は小津安二郎、主演は笠智衆と原節子、タイトルと名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
描かれるのは、特別ではない夫婦の話、家族の話なので、昔の映画はちょっと……という人も抵抗なく見られる1本だと思います。小津作品を見たことないという人の入門編としてもおすすめです。
とにかく原節子が美しくて、なぜこれほど美しいのかを考えることで、本当の美しさを学べる気がするのです。
2本目は、三島有紀子監督、中谷美紀主演、池辺葵の同名コミックの映画化『繕い裁つ人』です。
主人公は、古びた洋風の一軒家で洋裁店を営む市江。一代目である祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直し、先代のデザインを少しアレンジした新作を少しだけ作る、手作りの一点ものにこだわる市江に百貨店の担当者がブランド化の話を持ちかけ……。
この映画が教えてくれるのは、自分が本当に気に入ったものを長く愛用することがどれだけ心を豊かにするかということ。オーダーメイドの洋服が欲しくなります。
3本目は、役所広司と佐藤浩市が主演の時代劇『最後の忠臣蔵』。
赤穂浪士の吉良邸討ち入りで46人が主君に殉じ切腹しますが、2人の男が生き残ります。1人は討ち入りを後世に伝えるため逃がされた吉右衛門(佐藤)、もう1人は大石内蔵助の忘れ形見・可音(桜庭ななみ)を密かに育てあげた孫左衛門(役所)。
この2人の男性が使命を果たす物語がメインですが、可音を通して“女のたしなみ”ポイントも描かれます。可音が品のある女性になるために学ぶ、行儀作法、読み書き、芸事のシーンの所作の美しさ、どれも勉強になります!
4本目は、生田斗真主演、荻上直子監督(『かもめ食堂』『めがね』など)の『彼らが本気で編むときは、』。
トランスジェンダーの女性リンコ(生田)と彼女の心の美しさに惹かれた恋人のマキオ(桐谷健太)のカップルは、とある理由からマキオの姪トモと暮らすことになります。そんな3人がそれぞれの幸せを見つける60日間の物語。
リンコは料理上手、編み物上手、世話上手……そして誰よりも思いやりがある。こんな女性になりたい!と、女性が憧れる女性です。リンコの仕草、とっても色っぽくて参考になります!
今回は、“女のたしなみ”というキーワードで4本の日本映画を選んでみました。
時代と共に美しさの基準も変化していますが、時代を経ても変わらないのが本当の美しさ。そして、美しさには理由がある。
この人、美しいなぁと思うだけでなく、なぜ美しいと思うのか、もう一歩踏み込んで考えると見えてくるものがあって、この4本の映画はそれを気づかせてくれるのです。