charmmy TOPライフスタイル3時のヒロイン福田の女の生態録「ささやかな逃げ場所」

3時のヒロイン福田の女の生態録「ささやかな逃げ場所」

「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝し、名実ともに国民のヒロインとなった『3時のヒロイン』。普段はネタ作りを担当し、ゆめっち、かなでをツッコむ福田麻貴が、女という生き物に対してツッコミを入れる、女の生態コラム。

心の逃げ場所

 私には、ささやかな逃げ場所があるのだが、みなさんは何を心の逃げ場所にしているのだろう。そのささやかな逃げ場所というのは、おそらく喫煙者にとってのタバコのような存在で、私にとってはそれがコーヒーだ。とにかく居心地が悪いときに飲む。すなわち毎日だ。

私とコーヒーの関係性

 私は朝起きて、リビングのソファーに座って優雅に一杯のコーヒーを飲まない。それは理想の朝だけど、そんな時間を設けると一生家に居たくなって、どれだけ早起きしても遅刻するだろう。私は家を出る20分前に起きて慌ただしく玄関を飛び出し、現場に向かう途中にコーヒーを買っていって楽屋で飲む。これから、あまり喋ったことのない人達とまるで何回も喋ったことのあるようにトークをするわけだし、畏敬する先輩の楽屋に挨拶に行ってドキドキしながら頭を下げたあと、スタジオでまた何回も喋ったことあるようにトークをするわけだし、スベるかもしれないわけだし。

そんな時間が迫りくる中、私はコーヒーを飲むことで現実逃避している。それから劇場。劇場の楽屋なんてのはあってないようなもので、ひらけた空間にたくさんの男が各々の過ごし方をしている。女にとっては工業高校の休み時間みたいなもんだ。休み時間なら10分くらいで終わって耐え忍べるのだろうが、劇場は入り時間から本番まで1時間以上ある。そんな長時間、男だらけの空間で過ごすなんて私は耐えられない。そんなときもコーヒーだ。コーヒーは女だ。性別とかないけど多分同性だろう。

カフェインの力

 一体コーヒーの何がそんなに私を支えているのかわからないが、コーヒーにリラックス効果があることは間違いない。それは間違いないのだが、ほんなら何でシャキッともさせてくれんねん、という疑問がある。さぁ今から長時間机に向かうぞーというときにコーヒーを用意して、なくなったら注いで、飲んで、注いで、私は少し下痢になる。そしてトイレに行くといいアイデアが降りてくる。私が主人公ならコーヒーは24時間横にくっついてきてたまに助言をしてくれるキャラクターだろう。

それから、3時間しか寝てないのに朝6時から一日中ロケだよーという朝にもコーヒーを一気飲みする。これはもうカフェインの効果とかじゃなく、「はい、今から起きることね」という約束の儀式でしかない。もう、カフェインとかいう科学的なことというよりはジンクスみたいな、気持ちの問題なのだ。

心を癒すコーヒーのポテンシャル

 コーヒーの役割はそんなところに留まらない。数年前のある冬、ショックな思いをした。両想い確定、みたいな空気だと思い込んでた相手に、”立場上明かせなくて隠していた彼女”がいたのだ。それを告げられたときの感情を想像できるだろうか。立場上明かせないのに私にこっそり明かしたということは、それがバレるリスクを冒してでも、好きになるなよと釘を刺したかったということではないか。

ショックなだけならいいんだけど、恥ずかしい。その日も私はとりあえずチェーンのコーヒーショップに駆け込み、ただコーヒーを飲むだけの時間を取って、心を整理した。今までの大きな勘違いを照らし合わせていったり、そもそもそんな好きやったっけ?と自問してみたり。チェーンのコーヒーショップなのに上品な純喫茶の無口なマスターのように私を包んでくれるコーヒーの包容力たるや。コーヒーは最強の味方という感じがした。

コーヒーのない人生

 もはやコーヒーじゃなくてもいいのかもしれない、Wordの置換機能でコーヒーのところをすべて餃子にしたって成立するのかもしれない。覚醒剤、にしたら余計にしっくりくるが一気に危ない文章になる。きっとコーヒーがなくてもそれなりに人生を歩んでいる私だろう。だけどなんとなく心の拠り所でお気に入りの癒し飲料なのであった。

タバコも吸わずコーヒーも飲まない人、さらにはお酒も飲まない人はどこに逃げているのか気になる。

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福田 麻貴(3時のヒロイン)
お笑い芸人
2016年結成の女性トリオ「3時のヒロイン」のツッコミでありネタ作り担当。「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝。現在CX「ウケメン」や様々なテレビ番組で活躍中