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映画『寝ても覚めても』から読み解く本物の恋

人が人を好きになる瞬間は、ある日突然やってきます。

昨日まで友人だったけれど何かのきっかけで意識してしまう、顔がものすごくタイプの人と出会う、優しさに触れたことで気になり出す、趣味や仕事など共通の話題で盛り上がって意気投合などシチュエーションはさまざまであっても「あ、この人のこと気になる。好きかもしれない」という恋のスイッチは、自分でも気づかないうちに押されているものです。


人が人を好きになる瞬間

映画『寝ても覚めても』は、人が人を好きになる瞬間と何故その人を好きなのか、何故その人でなければならないのか──という問いかけを描いた大人のラブストーリー。

運命の出会いを描いた恋愛映画はたくさん作られていますが、この『寝ても覚めても』が他と少し違うのは、好きになった事実、愛したという事実に内包されている感情、その時のその人の気持ちが何ともリアルに描かれている、そこに強く惹かれるのです。


恋の謎が解けるかもしれない!?

恋愛感情が描かれる、恋愛映画なら当たり前じゃないか──と思いますよね。

でも、そもそも気持ちは目に見えないものですから、それが見えているかのように感じる、共感とはまた違う感覚を味わえる、それって実はすごいことだと思うわけです。

人を好きになること、恋に落ちること、好きで好きでどうしようもないことってこういうことだよねと思える、形のないはずの感情を目にする。恋の謎が解けたかのうようでもありました。


元恋人と瓜二つの人を好きになった女

喫茶店で働く朝子(唐田えりか)はある日、隣のビルで働く亮平(東出昌大)と出会い、付き合うようになりますが、彼女が彼を意識するようになったのは亮平がかつての恋人・麦(ばく)とそっくりだったからでした。

顔がそっくりだったから好きになったのか、その感情は本物と言えるのか──。朝子を通して、自分は恋人やパートナーのどこに惹かれたのかを考える。自分自身の気持ちも見えてきます。


愛するほど信じられなくなっていく男

主演の東出昌大が1人2役で演じるのは、ミステリアスな自由人の麦(ばく)と実直なサラリーマンの亮平です。亮平の立場としては、朝子が自分に注ぐ“好き”という気持ちを本当に信じていいのか、彼女を愛するほど不安だったと思います。

人は、失恋したときに元恋人の面影を新しく出会った人に重ねること、ありますよね。そういう意味では、亮平と朝子の出会い方はよくある出会い方の究極の形と言えるのではないでしょうか。


この映画を見て、人を好きになるってどういうことなのかを自分なりに考えてみました。好きだった人、いま気になっている人を含めて、その人の何に惹かれたのかを──。

でも結局は後付けで、恋に落ちるときというのはさまざまな偶然が重なった結果、生まれるもの。それを私たちは「運命」と呼んでいるのかもしれません。気持ちは見えないものであるからこそ、ちゃんと言葉として伝えたいと気づかせてもらった映画です。


『寝ても覚めても』9月1日(土)公開
監督:濱口竜介
出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知(黒猫チェルシー)ほか
www.netemosametemo.jp 

ⓒ 2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS  

新谷里映
映画ライター、コラムニスト
雑誌編集者を経て現在はフリーの映画ライター、コラムニスト。雑誌・ウェブ・TV・ラジオ、各メディアで映画の紹介をするほか、コラムの執筆、映画のオフィシャルライター、トークイベントのMCなど幅広く活躍。