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フランス映画『若い女』のヒロインが伝授、終わった恋の忘れ方

恋をすると女性はキレイになる、恋をすると世界が輝いて見える。そんな恋が、好きな人との人生が、ずっと続いたらいいけれど、ある日突然に終わりを告げられることだってあります。

恋の転落──

終わった恋を忘れるにはどうしたらいいのか。時間が解決してくれる、仕事に打ち込む、新しい出会いを探す……方法はいろいろありますが、いざその時がくると、やっぱり途方に暮れてしまうものです。 


31歳、仕事も家もお金もない!

いま上映中のフランス映画『若い女』には、終わった恋の忘れ方のヒントがありました。

ヒントというよりも、どん底のヒロインを目の当たりにすることで救われる、勇気をもらう感覚に近いのかもしれません。

ヒロインは、31歳のポーラ。

10年間付き合っていた年上の写真家の恋人に突然に別れを告げられ、住む場所もない、仕事もない、お金もない、何もかもなくしてパリの街に放り出されてしまいます。 


エキセントリックなのに応援したくなる

ポーラに救われる女性もいるのでは……と思ったのは、彼と別れた後の彼女の行動がとてもエキセントリックで滑稽だったから。

彼の家の前で叫んで、ドアに頭をガンガンぶつけて、血だらけになって病院へ。医師や看護師にまで怒りをぶつけて、行き場のない失恋の感情を吐き出します。

同性から見ても「こんな女、嫌だな」と思うけれど、なぜか憎めなくて、あまりにも自由奔放すぎて、羨ましくもある。そして応援したくなるんです。


写真家のミューズから自立する女へ

生きるために、ポーラはベビーシッターと下着屋で仕事を始めます。

仕事をするのは当たり前のこと──ではあるのですが、彼女は10年もの間、写真家の彼の隣にいて、彼のミューズでいることが仕事のようなものだったと思うんですね。

ポーラのセリフにもありますが、彼がすべてだった、そのすべてだった彼を失って何もかもなくなってしまったと。

そこから立ち直るってかなりのパワーが必要です。


少しくらい無茶をやってもいい

この映画が単なる失恋映画にならないのは、失恋したヒロインを悲劇のヒロインとして美しく描いていないことです。

元彼のところから猫を盗む、地下鉄で別の女性と間違えられてそのままその女性になりすます、嘘はつくし、泣き虫だし、見栄っぱりだし、もうダメダメなんです。

でも、失恋を乗り越えようとしている。

ああ、ポーラみたいに無茶苦茶やってもいいんだな、そんなふうに思える。気づくと元気をもらっていました。


終わった恋を忘れることはできるのか──

ポーラから教えてもらったのは、頼れる人は頼って、体のなかに溜まっている未練とか後悔、哀しみ、怒りをちゃんと吐き出すことです。吐き出すことでまた後悔するかもしれないけれど、それが自分と向きあうことになる。

無理して忘れようとしなくても、向きあって前へ進めば、自然と物事は過去になっていくんだなぁと気づいたら、また恋をしたくなっている自分がいました。


『若い女』
公開中
監督・脚本 レオノール・セライユ 
出演 レティシア・ドッシュ、グレゴワール・モンサンジョン、スレイマン・セイ・ンディアイ、ナタリー・リシャール ほか
http://www.senlis.co.jp/wakai-onna 

ⓒ 2017 Blue Monday Productions 
新谷里映
映画ライター、コラムニスト
雑誌編集者を経て現在はフリーの映画ライター、コラムニスト。雑誌・ウェブ・TV・ラジオ、各メディアで映画の紹介をするほか、コラムの執筆、映画のオフィシャルライター、トークイベントのMCなど幅広く活躍。