夏に出会った恋は燃え上がる、秋に出会った恋は長続きする、いろいろ言われてるが、統計として出ているのは、1年のなかで結婚する人が多いのは10月、離婚する人が多いのは3月だそうだ。
ジューンブライド、6月の結婚に憧れる人も多い。
そもそもジューンブライドはヨーロッパから伝わってきたものだ。6月に結婚した花嫁は幸せになれると言われる理由には諸説あるらしい。
ローマ神話の主神ユピテルの妻のユノは、結婚と出産を司る女神=結婚生活を守護する女神。そんな神話に基づく説がひとつ。
とてもロマンチックではあるが、現実的に納得するのは別の説──近代化になる以前、3月から5月までは農作業が忙しく、その時季の結婚が禁じられていたというものだ。
繁忙期の過ぎた6月まで結婚を待っていたという方が説得力がある。
そのジューンブライドが日本に入ってきたのは、ロマンチックからさらに遠のいてしまうが、実は企業戦略だった。
日本の6月は梅雨にあたり、結婚式には向いていない時季。
そこでヨーロッパのジューンブライドを取り入れて結婚式を増やそうとしたというわけだ。
どの季節に出会っても、どの季節に結婚しても、出会うべき人とは出会うもの。ただ、言えるとしたら、旅先での出会いは運命を感じやすいのではないかということだ。
いまこの瞬間を逃したら二度と会えないかもしれない……と思うと、人はいつもよりも行動的になるだろうし、この人は運命の人かどうかを判断する本能的なものが強くなる。
そんな旅先の出会いを描いた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』は、リアルで、ロマンチックで、旅をしたくなる、そして恋をしたくなる映画だ。
セリーヌ(ジュリー・デルピー)とジェシー(イーサン・ホーク)は、ブダペストからパリに向かうユーロトレインのなかで出会う。
もう少し話したい、もう少し一緒にいたい、運命を感じたジェシーは、ウィーンで途中下車をして朝日(サンライズ)まで街を歩こうと提案をする。
その誘い方も、街を歩きながらの会話も、この映画の会話すべてが素晴らしい。
好きなセリフがある。別れの迫った朝にセリーヌが言うセリフだ。
「相手を知れば知るほどその人が好きになる、
どう髪を分けるのか、
どのシャツを着るのか、
どんな時にどんな話をするのか、
すべて知るのが本当の愛よ」
愛し合って結婚したはずの2人が、年を重ねると憎しみ合ったり飽きてきたりするのは互いの反応が予測できてしまうからで、相手を知ろうとし続けることで、愛し合い続けられるという意味のセリフだ。
きれいごとと言ってしまえばそれまでだが、そう心がけられたら……と思う。
その気持ちを思い出したくて、この映画を繰り返し見たくなるのかもしれない。(text:Rie Shintani)