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愛から生まれた嫉妬はどこへたどり着く?『かごの中の瞳』

日々、嫉妬という感情とうまく付き合っていけたら……と思っています。可愛いなあと思える軽めの嫉妬から、それちょっと重症じゃない? という危険な嫉妬までさまざま。そのなかでも恋愛で生まれる嫉妬には疑いがプラスされ、男女問わず悩まされるものです。

“嫉妬をする人は、わけがあるから疑うのではない。
 疑い深いから疑うのです。──シェイクスピア”

偉人たちの名言にも嫉妬に関するものは多いです。今回は、そんな“嫉妬”と“疑惑”を描いたミステリー映画『かごの中の瞳』をピックアップしてみました。


ブレイク・ライヴリーの新境地!

主人公のジーナを演じるのは、ドラマ『ゴシップガール』のブレイク・ライヴリー。ドラマの大ヒットで演じたセリーナ役のイメージは今でも根強いですが、出演作のセレクトが上手いんです。

最近は、自身の美しさを存分に活かしたラブストーリー『アデライン、100年目の恋』、ひとり海に残された女性が自然と人食いザメと格闘する『ロスト・バケーション』、ウディ・アレン監督のロマンチック・コメディ『カフェ・ソサエティ』、そして『かごの中の瞳』は彼女の見たことのない一面を引き出しています。


理想の夫に嫉妬と疑惑が生まれる瞬間

ジーナは、子供の頃の交通事故で失明してしまいますが、保険会社に勤めるジェームズと結婚、彼の赴任先のタイ・バンコクで幸せに暮らしています。ジェームズはジーナのことをとても愛していますし、献身的に彼女を支える男性です。

そんな理想の夫にみえるジェームズに、“嫉妬”と“疑惑”が生まれます。

きっかけは、ジーナが角膜移植によって片目の視力を取り戻したことでした。愛する人の視力が戻る、それはとても嬉しいことのはずなのに、ジェームズにとっては不安要素でもあったのです。彼女の目に自分はどう映るのか──。


想像と違うと愛は冷めてしまうのか?

恋に落ちるとき、愛し始めるとき、外見と内面がどう影響しあうのかはよく描かれるテーマですが、『かごの中の瞳』には、愛の裏側にある感情を引きずり出してくるような感覚があります。

光を失ったジーナはジェームズの内面を愛して結婚したはずなのに、視力を取り戻したときに何度もつぶやく。夫の顔も、家の内装も「想像と違った」と──。

これはブレイク・ライヴリーが語っていることですが、幼い頃に失明したことで、ジーナは真の意味で思春期から大人へと成長することができなかったのではないか、そう捉えて演じたそうです。


女は光の中で輝き男は陰から束縛する

視力を取り戻したジーナは青春を取り戻すかのように行動的になり、どんどん輝いていく。そんな彼女を温かく見守ることができたらよかったのでしょうけれど、逆にジェームズはどんどん自信を失い、彼女が自分から離れていくのではないかと不安になり、疑い深くなって、嫉妬深くなっていきます。

「嫉妬」を改めて辞書で引いてみると──それまでいだいていた優越感・愛情・独占感が突如、他にしのがれるようになったことに気付いた時に感じる、ねたみの気持ち。ジェラシー。──とあり、まさにジェームズの心情です。

男が女の愛を取り戻すためにどんな行動に出るのか、男に疑惑の目を向けた女がどうやって真実と向きあうのかが、この映画のサスペンスとしての面白さです。

決して派手な映画でも華やかな映画でもないですが、スクリーンに映し出される目に見える映像、その向こう側にある見えないはずの感情が見えてくるような、思考を覗いたような感覚を味わうと思います。

嫉妬と疑惑がもたらす愛の結末はどんなものなのか? 愛についてじっくり考えたくなる、秋にぴったりの映画です。


『かごの中の瞳』
9月28日(金)公開
監督・脚本 マーク・フォースター 
出演 ブレイク・ライヴリー、ジェイソン・クラーク、ダニー・ヒューストン ほか
R-15
http://www.kagonaka.jp/

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新谷里映
映画ライター、コラムニスト
雑誌編集者を経て現在はフリーの映画ライター、コラムニスト。雑誌・ウェブ・TV・ラジオ、各メディアで映画の紹介をするほか、コラムの執筆、映画のオフィシャルライター、トークイベントのMCなど幅広く活躍。