好きな人と付き合いたい、愛する人と結婚したいと思っていても、妥協という選択肢もあって、時間の流れによって気持ちが変化してしまうこともあって……恋愛はややこしいものです。
自分の気持ちの変化に自分自身が追いつけなかったりすると、好きってどういうことなのか、愛するってどういうことなのか、分からなくなってしまう……。
そんな時に、気持ちを確かめたり、勘違いだと気づかせてくれたりするのは、禁断の愛を描いた映画だったりします。
禁断の愛の舞台は17世紀オランダ
『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』も禁断の愛の物語です。タイトルの“チューリップ・フィーバー”という言葉は何ともインパクトがありますが、これはこの映画の時代を現しています。
物語の舞台は、黄金時代と呼ばれた17世紀のオランダ。好景気に浮かれた人々は投資や収集に熱中。そのなかで特にブームになっていたのが絵画とチューリップ。
財を成した人たちはその成功を形に残すために肖像画を発注し、チューリップに夢中になる。希少な縞模様のチューリップの球根1個が邸宅1軒分に相当する、そんな時代です。
夫の目の前で他の男に心を奪われる女
この映画で描かれる、許されない恋に落ちていく男女は、画家と人妻として出会います。
主人公は、若く美しいソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)。孤児として修道院で育った彼女は、親子ほど年の離れた富豪で有力者の商人コルネリス(クリストフ・ヴァルツ)と結婚。
彼女にとってその結婚は生きていくための妥協の結婚でしたが、穏やかで不自由のない生活に幸せを感じていました。
けれど出会ってしまうわけです。激しく恋に落ちてしまう相手と──。
画家としての将来か彼女との未来か──
その相手は、将来を嘱望されている若手画家のヤン(デイン・デハーン)。コルネリスが妻との肖像画を依頼したのがヤンでした。夫にしてみたら、なんとも皮肉な展開です。
出会った瞬間に特別なものを感じたソフィアとヤンは、いわゆる一目惚れ。それも、かなり強烈な一目惚れで、気持ちが抑えられなくなっていきます。
絵を通じて向きあう時間のなかで、許されない恋が禁断の愛へと変わっていく。そして、ソフィアを幸せにするためにヤンはチューリップ売買に乗り出して……愛の泥沼にはまっていきます。
本気で愛した男のために女は暴走する
愛の泥沼劇場ではあるのですが、そこにソフィアが禁断の愛を手にするために仕掛ける計画が凄い! ただでさえ2人の密会にドキドキさせられているのに、そこに驚くべき計画が加わってハラハラしっぱなし。
しかもソフィアとヤンを演じるアリシア・ヴィキャンデルとデイン・デハーンが美しすぎて、2人に見入ってしまう。見入ることで、彼らと一緒に危険な恋愛に囚われていく。まるで自分が恋に落ちたかのような感覚にさせられます。
この『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』の原作は「フェルメールの絵画の世界を小説にしたい」と願った作家がフェルメール作品からヒントを得て書き上げた物語。
映画を見た後は、絵画を見る目も変わるでしょうし、その絵の背景にどんなドラマがあるのかを想像して、絵画鑑賞も楽しくなりそうです。
ソフィアとヤンとコルネリス、3人それぞれの愛の貫き方を見て、恋って、愛って──と考える。深く考える。禁断の愛を貫くための代償、本当に運命の相手かどうかを試す試練、恋愛映画好きとしては大満足の1本でした。
『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』
10月6日(土)公開
監督 ジャスティン・チャドウィック
出演 アリシア・ヴィキャンデル、デイン・デハーン、クリストフ・ヴァルツ、ジュディ・デンチ、ジャック・オコンネル ほか
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