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理想の求めすぎは悲劇のはじまり?

誰だって、幸せになりたい──。

恋愛において、仕事において、人生において、幸せといってもいろいろありますが、恋愛における幸せは、好きな人とめぐり逢う、その人と一緒に暮らす、人生を共にする、愛し愛され続ける、といったところでしょうか。

けれど、たとえその幸せを手に入れたとしても、もっと違う幸せがあるんじゃないか──と、手にした幸せを自分から壊してしまうことだってあります。

そんな複雑な恋愛の感情、愛と裏切りを描いたのが、ウディ・アレン監督の最新作『女と男の観覧車』です。


安定を願いながらも刺激を求め、真実の愛に憧れながら刹那の恋に溺れるヒロインのジニー。

過去の悲劇を繰り返さないと自分自身に誓い、再婚同士で新しい家庭を築きますが、年下の青年と恋に落ちてしまいます。

映画ではよくある話です。しかしながらケイト演じるジニーが興味深いのは、自分の理想の幸せを追い続ける女性であり、ふつうなら心の奥底に留まっているその理想、いや欲望を行動に移してしまう。

嫌な女性に映ったとしたら、そう感じたとしたら、心の奥底でジニーが羨ましいと思っている現れかもしれません。ジニーの人生は悲劇とセットではありますが……。

「悲劇が生まれるのはその人自身の自己責任?」
「いや、人の運命はどうあがいても変えられない」
「でも…私の悲劇は自己責任よ」

劇中の会話です。二度と過ちは繰り返さないと言いながらも別の幸せを追い求めてしまう。自ら悲劇のヒロインになるような選択をしてしまう。理解できそうでできない、共感できるヒロインとも言い難い。

ジニーを演じたケイト・ウィンスレットは「ジニーの好きなところは、自分が壊れそうな時の潔さと生命力よ」と語っています。たしかに、その通りだと思います。

私には才能がある、もっと理想の幸せに近づきたい──その感情を抑えることなく生きている。だからどこか惹かれてしまう。

そして、ケイト・ウィンスレットが演じているからというのも大きいでしょう。


俳優一家で育ち、17歳で出演した『乙女の祈り』が各国の映画祭で賞に輝き、世界的に彼女の名前は知られるようになります。

その後は、『いつか晴れた日に』で初めてアカデミー賞とゴールンデン・グローブ賞にノミネート、レオナルド・ディカプリオと共演して世界的大ヒットとなった『タイタニック』では一躍スターの座を手にしました。そして『愛を読むひと』でアカデミー賞受賞を果たします。

プライベートでは3度の結婚を経験していますが、恋多き女優といったお騒がせ感のイメージはあまりなく、これが私だもの的コメントで乗り切るというか、さすが大女優と思わせるのが彼女の凄いところです。

また、セクハラなどの性被害をSNSなどで告発する「#MeToo(私も)」に関しても、『乙女の祈り』や『愛を読むひと』のプロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタインについて声を上げています(彼女自身は性的な嫌がらせはなかったそうですが、ワインスタインから「君のデビューもオスカーも私のおかげだ」というような発言があったそうです)。

女優としての圧倒的な演技力、その才能に惚れるだけでなく、社会に対して堂々と意見を言える女性という意味でも、ケイト・ウィンスレットは多くの女性の憧れです。

そして、今回ピックアップした『女と男の観覧車』で彼女が演じるジニーを通して、自分にとっての幸せとは何かを考えると思います。(text:Rie Shintani)

『女と男の観覧車』
6月23日公開
監督・脚本 ウディ・アレン
出演 ケイト・ウィンスレット/ジャスティン・ティンバーレイク ほか
http://longride.jp/kanransya-movie
Photo by Jessica Miglio ⓒ2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.
新谷里映
映画ライター、コラムニスト
雑誌編集者を経て現在はフリーの映画ライター、コラムニスト。雑誌・ウェブ・TV・ラジオ、各メディアで映画の紹介をするほか、コラムの執筆、映画のオフィシャルライター、トークイベントのMCなど幅広く活躍。