みなさん、いま習い事をしていますか? その習い事を楽しんでいますか?
子供の頃にあれこれ習い事をしていたとしても、大人になると「仕事が忙しくて……」「余裕がなくて……」など、習い事を続けていくことは、実はとても難しいことなのかもしれません。
けれど、自分に合った習い事がひとつあるだけで、人生はとても豊かになる、自分の哲学になる。そんなふうに感じた映画と出会ったことで、これから先の人生かけてずっと続けられる習い事をしたいなあと思ったんです。
その映画は『日日是好日』。にちにちこれこうじつ、と読みます。
一生をかけられる“何か”を見つけたい
この映画は、お茶、茶道の映画です。
茶道の映画というと、千利休といった歴史の人物を思い浮かべるかもしれないですが、この物語の主人公は現代に生きる女性。
一生をかけられるような“何か”を見つけたいと思いながらも、その何かが何なのかが分からずに過ごしている、ごく普通の女性です。
彼女の名前は、典子(黒木華)。20歳のときに、「お茶を習ってみたら?」という母の何気ない言葉と、たまたまその場に居合わせた同い年の従姉妹・美智子(多部未華子)の「一緒にやろうよ!」という推しがあって、お茶を習うことになります。
まるでお茶を習っているような臨場感
典子と美智子が通うのは、タダ者じゃないと噂の武田先生(樹木希林)。初めて武田先生の茶道教室でお茶の稽古をした日から24年間にわたる典子とお茶の日々が描かれます。
これまでも千利休を題材にした映画は作られてきましたし、時代劇にも利休は登場します。ですが、現代を舞台に、お茶の作法をここまで丁寧に描いた映画って、見たことがなかった。
まるで典子や美智子と一緒に武田先生から稽古をうけているような、自分も生徒になったような感覚もありました。それは、映画を見ているうちに自然とお茶に興味が湧いたということです。
季節の変化を感じて楽しむということ
描かれるのは日常です。仕事の挫折があったり、失恋があったり、大切な人との別れがあったり、誰もが経験しうる出来事なので、特別に珍しいことを描いているわけではないけれど、お茶によって得られる考え方とでもいうのでしょうか、それが添えられると不思議と日常が違って見えてくる。
雨の日は雨の音を聞く。雪の日は雪を見る。夏には夏の暑さを、冬は身の切られるような寒さを感じる。お茶の作法はもちろんですが、お茶を習うことで、日々の捉え方が変わってくるんですね。
名優・樹木希林さんが遺したセリフ
そして、武田先生の言葉ひとつひとつが人生の教えのように心に沁みます。
「私、最近思うんですよ。こうして毎年、同じことができることが幸せなんだって」
これはこの映画のタイトルにつながるセリフですが、ほかにも典子と美智子との会話のなかには、なるほどなあと思える言葉がたくさんあります。そんなふうに考えたらいいのか! とか、逆になんでも頭で考えすぎるからこうなのか……とか。たくさん気づかせてもらいました。
この映画は、樹木希林さんの遺作となりましたが、樹木希林さんの演じる武田先生、本当に素敵でした。
現代はとても便利な時代ですが、便利になりすぎて、流れが速すぎて、ちょっと息苦しいな……と思うこともあります。そんな息苦しさを『日日是好日』に緩和してもらったような気がします。
なかでも二十四節気──立春・雨水・啓蟄……というように1年を二十四等分して季節を感じることが素敵だなあと思ったので、手始めに、季節の和菓子とお抹茶を買いに行って、日本の四季を意識して日々を過ごしてみようと思います。
『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』
10月13日公開
監督・脚本 大森立嗣
出演 黒木華、樹木希林、多部未華子 ほか
原作 森下典子『日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』
http://www.nichinichimovie.jp/
ⓒ 2018「日日是好日」製作委員会