charmmy TOPライフスタイルホラーはホラーでも北欧ホラー『テルマ』が奥深くて面白い!

ホラーはホラーでも北欧ホラー『テルマ』が奥深くて面白い!

今年のハロウィン、どんなふうに過ごしますか?

もともとケルト人の宗教的な行事が19世紀中期頃、移民と共にアメリカに伝わったと言われるハロウィンですが、現代では秋を彩る一大イベント、最近は日本でもポップカルチャーのひとつとして定着しています。

ハロウィンにどんな仮装をするのか、映画を参考にする人も多く、ハロウィンにまつわる映画はホラーも多いことから、この時期はホラー映画を見たくなる季節でもありますよね。


地味にみえて実は後引く怖さがある!

今回、この秋におすすめしたいホラー映画としてピックアップしたのは、王道のホラーとは少し違う、北欧ホラー『テルマ』。

この映画、かなり衝撃的です。

大学進学を機に親元を離れた少女テルマが、自分の身体のある変化に気づき、自分も知らない自分と出会う物語。華やかな大学生活が描かれるわけではないので、正直、地味です。

ですが、地味にみえるその水面下に広がっているもの=彼女のなかに眠っている“恐ろしい力”、それがこの『テルマ』の面白さ。


自分自身と向きあうことに潜む恐怖

平凡なヒロインが何かのきっかけで自分自身と向きあうホラー映画といえば、スティーヴン・キングの同名小説を映画化した『キャリー』が有名ですが、ヨーロッパにもそのジャンルのホラーはあります。

たとえば──

『ぼくのエリ 200歳の少女』
『RAW 少女のめざめ』
『獣は月夜に夢を見る』

そして

『テルマ』

ヨーロッパ圏の映画はあまり馴染みがない人もいると思いますが、もしも自分だったら……と、リアリティーのなかにホラーというファンタジーが絶妙に描かれています。


テルマのなかで目覚める“恐ろしい力”

『テルマ』の特徴は、ヒロインの感情の変化を中心に据えていることでしょうか。

また、監督のヨアキム・トリアーが「自分の内側から生まれた本物のパッションが一体どうなるのか? というテーマのホラー映画を作りたかった」と語っているように、親元を離れる(自立)、大学に進む(挑戦)、人を好きになる(初恋)など、誰もが経験することをテルマも経験しますが、その経験によって生まれる感情によって、テルマの力が目覚めてしまう──。


愛してほしいと願うことが恐怖を生む

人を好きになると、自分の気持ちをコントロールできなくなるものですし、相手も自分と同じように好きでいてほしい、愛してほしいと願う、それはごく普通のことです。でもテルマの場合は、そんなふうに願うことによってある力が働いてしまう。それが怖い。

その怖さは「あー、怖かった!」と、映画を見終わったときに恐怖が過去のものになっているような瞬間的な怖さではなく、じわじわと絡め取られて、見終わった後もずっと考えてしまう怖さです。


テルマの身にいったい何が起きているのかを探るサスペンスであり、テルマの力を知ってからは、よりホラー感が強くなっていく。

その背景にあるのはテルマの成長と決意です。ひとりの女の子が試練を乗り越えて大人になっていく、いろいろ経験することで新しい感情を知り、自分を知っていく。そういう意味では、女性が入り込みやすいホラーと言えるかもしれません。

この秋は、北欧ホラーで新しい体験をしてみるのはいかがでしょうか。

『テルマ』
10月20日公開
監督・脚本 ヨアキム・トリアー
出演 エイリ・ハーボー、カヤ・ウィルキンス、ヘンリク・ラファエルソン、エレン・ドリト・ピーターセン ほか
https://gaga.ne.jp/thelma/
PG12

ⓒPaalAudestad/Motlys
新谷里映
映画ライター、コラムニスト
雑誌編集者を経て現在はフリーの映画ライター、コラムニスト。雑誌・ウェブ・TV・ラジオ、各メディアで映画の紹介をするほか、コラムの執筆、映画のオフィシャルライター、トークイベントのMCなど幅広く活躍。