好きな人のことは何でも知りたいですし、自分のことも知ってほしい、そう思うのはごく自然なこと。好きな人のパーソナルスペースにどうしたら深く入り込めるか──「好き」という気持ちが動き出した頃は、そんなことばかり考えてしまうものです。
でも理想は、気づいたら自分の生活のなかに彼がいる、という自然な流れ。
そんな恋愛における“パーソナルスペース”について考えているときに、参考になるような面白い恋愛映画を探していたところ、ありました!『セットアップ ウソつきは恋のはじまり』というラブコメディです。
鬼上司から自由になるための恋愛作戦
主人公は、仕事命の鬼ボスに振り回されている2人のアシスタント、ハーパー(ゾーイ・ドゥイッチ)とチャーリー(グレン・パウエル)です。
ハーパーの上司は有名スポーツ記者(ルーシー・リュー)、チャーリーの上司は大物投資家(テイ・ディグス)。同じビルにオフィスがあることから、それぞれの部下のハーパーとチャーリーは自然と顔を合わせるようになります。
朝から夜遅くまで働く上司に頭を抱えていた2人は、互いの上司が付き合えば、恋人同士になれば、自分たちに自由な時間ができるのではないかと、ある計画を実行に移します。
仕組まれた出会いでも恋に落ちるのか?
その計画とは──ハーパーとチャーリーはアシスタントですから上司のことは何でも知っている。好きな食べ物から異性のタイプまで、知り尽くしている。それを利用して、偶然を装って上司を出会わせ、お膳立てしてくっつけてしまおうという作戦です。
自由な時間が欲しい! と始めた計画ですが、2人の上司は「これは運命の出会いだ!」と信じてしまう。自分の部下が背後で操っているとは知らずに……。
運命的なシチュエーションを用意すれば、そこから恋は生まれるのか? という恋愛の本質の問いかけでもあります。
同じ目的を持つことで芽生える感情
2人の上司の恋の行方が描かれると同時に、ハーパーとチャーリーそれぞれの恋も動いていきます。
自由な時間ができ、マッチングアプリで知り合った男性とデートを重ねるハーパー。一方、チャーリーは美人モデルの彼女と過ごしますが、気づいてしまうんですよね、自分の本当の気持ちに。
このラブコメディの面白いところは、運命に見せかけた恋、同じ目的を持つ戦友から派生する恋、異なる始まり方の恋を描きながら、最終的にひとつのテーマにたどり着くところです。
気づいたら彼のすべてが好き!
ハーパーの友人の結婚式のシーンで素敵なスピーチがありました。この映画のテーマをずばり言っているスピーチです。
「人柄で好きになって
人柄に関わらず愛する」
これはスピーチの一部ですが、恋から愛へ、一緒に生きていきたいと思う相手にはこういう感情を抱くものなんだと思わせてくれる言葉です。たとえ外見や肩書きが気になったとしても、好きになるのは相手の中身=人柄であり、その人柄のなかには欠点もあるけれど、それも含めて好き、それが本当に愛するということなのだと。
なんだか面白そうな映画だなぁと気軽な気持ちで見始めた映画でしたが、なかなかどうして恋愛の本質を突いた、しっかりとしたテーマがありました。
改めて大事だなぁと思ったのは会話です。付き合いが長くなると会話がなくてもお互いが何を考えているのか分かると言いますが、そこにたどり着くにはやっぱり相手を知るための会話が必要で。
くだらない話から深い話までいろいろ話せる、そういう人を好きになるのかもしれないですね。