主人公はニューヨークで建築家として働くナタリー。「ニューヨーク」「建築家」というキーワードからデキる女性を想像しますが、実際は……「このゴミ捨ててくれる?」「コピー機の調子悪いから修理の連絡してくれる?」「コーヒー買ってきてくれる?」といった感じで、建築家なのになぜかアシスタント扱い。
どうして認めてもらえないの? 私の何がいけないの? やるせなさでいっぱいです。そんなナタリーに、さらなる不運が! 地下鉄でひったくりに遭い、取っ組み合いになって頭を強く打ち、気を失って病院へ──。
そして目覚めたら、自分以外が“ロマコメの世界”に変わっていた!? そこからこの物語は始まります。
というのも、このナタリーというヒロインは「女は恋以外で幸せになるべき」という、ロマコメ否定派女子。気を失う前は、ロマコメなんて嘘っぱちだとボロクソに批判していましたが、夢なのか現実なのか、ロマコメ世界の住人になったことで、ロマコメが与えてくれるパワー、そしてロマコメを否定していた時の自分に足りなかったもの、気づけなかったこと、大事な人は誰なのか……が見えてくるのです。
個人的にロマコメは大好きですが、以前「好きな映画は?」と聞かれたときに『プリティ・ウーマン』を挙げたら「映画の仕事をしているのに、そのタイトル?」と、冷ややかな対応をされたことがあります。ロマコメを軽視している人、意外といるんですよね(悲しい……)。
でも、ロマコメで描かれていることって、恋に落ちた瞬間の舞い上がるような気持ちとか、好きという想いが届かない切なさとか、友だち以上恋人未満のフクザツな関係とか、“恋”にまつわる感情がたくさん描かれている。誰もが共感できるテーマだと思うんです。
この『ロマンティックじゃない?』には、恋愛映画のお約束のシチュエーションがこれでもかってほど描かれていて、『プリティ・ウーマン』をはじめ『ウェディング・シンガー』『ノッティングヒルの恋人』『メラニーは行く!』『ベスト・フレンズ・ウェディング』『恋人たちの予感』……1980年代〜2000年代に作られたロマコメのオマージュだらけ。ロマコメ好きにはたまらない1本になっています。
なかでも『プリティ・ウーマン』は「あのシーンのオマージュね!」というシーンがいくつもあるので、事前に見ておくとより楽しめるかと思います。
主人公のナタリーを演じているのは、『ピッチ・パーフェクト』シリーズや『バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!』に出演しているレベル・ウィルソン。太った体型を活かしたバイプレーヤーを演じることの多いコメディエンヌで、今回はなんと主役! 演じたナタリーと同様にラブコメは苦手だったそうですが、ナタリーを演じたことでラブコメの素晴らしさに気づいたと語っていました。というわけで、ロマコメ初心者にもオススメです!
監督 トッド・ストラウス=シュルソン
出演 レベル・ウィルソン、リアム・ヘムズワース、アダム・ディヴァイン、プリヤンカー・チョープラー、ベティ・ギルピン、ジェニファー・ソーンダース ほか