年の離れた相手とコミュニケーションをとるのは難しいもの。特に年下から年上に対しては表立って悪口が言えないからこそ、不満をためているケースがあります。一見、褒め言葉のように思える発言にも、隠された“裏の意味”があるかもしれません。
今回は実際にあった「これって褒め言葉? それとも悪口?」と悩む体験者のモヤモヤしたエピソードに、トークCAREで活躍中の人気カウンセラー吉見マサノヴ先生が回答! 褒め言葉に隠された年下からの裏のメッセージを読み解き、とっさに使える上手い返し方や気持ちをスッキリさせる方法をアドバイスしてもらいました。
ケース1:「自分の意見をしっかり持ってる方ですよね」
[体験者エピソード]
職場で上司と揉めて長い口論になった後、部下にいわれた一言が気になっています。「Aさんって、自分の意見をしっかり持ってる方ですよね! はっきりと口に出せるの尊敬しちゃいます!」褒められているようにも、周りとなじめないことを笑われたようにも感じました。どう返したら正解だったのでしょうか?(Aさん/営業/39歳)
<吉見先生のアドバイス>
「意見をしっかり持っている」という言葉には、「頑固」、「我が強い」、「柔軟性がない」という裏の意味が込められています。揺るがないポリシーを持つのは大切ですが、共感や同調が優先されるような職場環境では、どうしても浮いてしまう傾向にあります。
相手を言い負かそうとする攻撃的なコミュニケーションスタイルの人に対して、このような褒め言葉が使われがちです。自分の気持ちを優先する余り、相手への心配りが不足していないか振り返ってみましょう。
◎上手な返し方◎「周りの意見ももっと聞かなきゃいけないんだけどね」
あっさりと欠点を認める方が好印象。人は他人の欠点に意外と寛容で、自ら欠点をさらけ出せば親近感をもって受け止めてくれることが多いからです。
ケース2:「洋服がいかにも女子って感じでカワイイです!」
[体験者エピソード]
服装規定がないため、私服で仕事をしているのですが、最近入社してきた若い社員から「Bさんの洋服っていかにも女子って感じでカワイイです!原宿系とか好きなんですか?」と聞かれました。30歳を超えた自分に年不相応なファッションだと言われているような気がして、落ち込んでいます。(Bさん/IT系/35歳)
<吉見先生のアドバイス>
たしかに「いかにも」という発言は、ファッションが年齢不相応でアンバランスだと、暗に伝えているのでしょうね。しかし、ファッションと年齢だけを比較してアンバランスと判断する若い社員の思慮の浅さ、見解の狭さが「いかにも」若者です。
Cさんの服装は、年齢と「不相応」の部分があるのかもしれません。けれども、動きやすい、なじみやすいなど、仕事に「相応」している部分があるはずです。
◎上手な返し方◎「ちょっと若く見られるかもしれないけど、仕事をまわすにはこのくらいがちょうどいいのよね」
ただの好みではなく、仕事を円滑に進めるための合理性を取り入れた結果が今の服装であると伝えてみましょう。相手は見た目だけで判断してしまった浅はかさで、自己嫌悪に陥るでしょう。
ケース3:「そんなに食べても太らないなんてスゴイです」
[体験者エピソード]
後輩と一緒にランチをしたとき「Cさんってそんなに食べても太らないなんてスゴイです! 私すぐに体に出ちゃう体質なので」と、何気なく言われました。自分だって体重を気にしているので腹が立ちましたが、本当にそう思われているのかもしれなくて、モヤモヤしてます。(Cさん/デザイナー/33歳)
<吉見先生のアドバイス>
Cさんは、苦心して体重コントロールしている努力を認めてほしいのでしょう。しかし、人は「努力」と「天から与えられたもの」、どちらを羨ましいと思うでしょうか? 極端な話、努力はしようと思えば誰でもできるわけですから、羨望を抱くのは、やはり「天から与えられたもの」、この場合は「太らない体質」となります。
努力を認めてほしいときは、体重コントロールに苦心していると話せばいいと思いますが、スマートな返し方としては太らない体質であることを否定しないのが効果的です。
なぜなら「運命」「センス」「才能」などと同様、「太らない体質」という努力だけでは獲得できないデフォルトのスキルに、自己は優越感を味わい、人々は羨望を抱くのですから。
ケース4:「血液型○型じゃないですか?」
[体験者エピソード]
あるとき、同じ部署の女の子から「血液型A型ですか?」と聞かれ、「A型です」と返したとき「あー、A型っぽいですよね。分かります。几帳面ですもんね。私O型だからうらやましいですー」と言われたのが腑に落ちません。「几帳面」という言葉に、自分の気持ちの余裕の無さを指摘されているように感じたからです。そもそも、血液型で性格を判断されるのも納得いきません…。(Dさん/販売/31歳)
<吉見先生のアドバイス>
血液型で判定されるときは、たいていネガティブなことを遠まわしに伝えたいときではないでしょうか。ズバリ言うほど親密ではないから、人々は公平性・普遍性の高い血液型という概念を使用し、カテゴリーに分類していきます。
他にも星座や干支など、人はカテゴリーに分けることが大好きです。なぜならば、相手のことを手っ取り早く決めつけ、レッテルを貼ることによって、相手は未知の人ではなくなり、ひとまずの安心感を得られます。つまり、Dさんの血液型を知りたいのは、“とりあえずのあなた”が知りたいからです。
◎上手な返し方◎「ちなみにいい加減な射手座で、楽観的なネズミ年なんだけどね」
安心感を得たいということは、そこに不安があるということ。安易にカテゴライズされることに不満を抱かないためにも、相手に不安を抱かせないためにも、自分の情報を相手に伝え続けるのは、とても大切です。
ケース5:「Eさんなら、なんでも話せちゃいます」
[体験者エピソード]
自分によく話しかけてくる後輩についての悩みです。仕事の相談なら全然構わないのですが、職場の人間関係やプライベートの愚痴など、どんなこともペラペラと話してくるので不安になります。「Eさんなら、なんでも話せちゃいます」と彼女は言うのですが、自分も立場的に上司である以上、節度は守ってほしいと思っており、悩んでいます。(Eさん/IT勤務/25歳)
<吉見先生のアドバイス>
「なんでも話せちゃう」と思わせる理由として、聞く態度が上手なこと(傾聴姿勢)、伝えている情報が良いこと(自己開示)の2つが考えられます。
うなずきやアイコンタクト、笑顔で聞くなどの「傾聴姿勢」がしっかりしていると、相手が安心して心地よく、心を開いてくれます。また、自分のプライベートな情報を相手にありのままに伝える「自己開示」で、相手からもらった情報と、同じレベルの情報をお返ししなければいけないという「返報性の原理」が働き、相手も同じように自己開示をしたくなる、いわゆる「なんでも話したくなっちゃう」状態になるのです。
おそらくEさんは、このどちらかが上手いのでしょう。「なんでも話せちゃう」と言われるのは、この後輩だけではないはずです。相手に節度を守ってほしいと願うのではなく、礼節を守らせれば、Eさんは誰よりも良い上司であり、理解者になると思います。
褒められたら素直に喜んで、自己肯定感を高める
突然年下から思ってもいないことで褒められると、「他に言いたいことがあるのでは?」と気になってしまうところ。しかし、吉見先生によると、褒め言葉に裏の意味を感じ取ってしまうのは自己肯定感の低さが関係しているそうです。
「褒め言葉は、褒めることで何らかの目的に近づけたいという、裏の意味が必ずあります。よって、何か裏の意味があるのではないかと“勘繰ってしまう”ことが間違っているのです。勘繰らなくても大丈夫、裏の意味はあります!」
まずは、褒められた事実を受け入れ、素直に喜ぶことが重要です。最初は虚しさを感じるかもしれませんが、相手の話を受け入れるうちに、自己肯定感が高まり、裏の意味を気にしなくなるとのこと。自分では気づかなかった長所を年下に見つけてもらったと、喜ぶところから始めてみませんか?
【協力してくれたカウンセラー】
吉見マサノヴ先生
心理カウンセラー
公認心理師
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