夫婦一緒にとる食事は、家庭の中でも大切な時間です。しかしときには「〇〇な料理は食べたくない」「君の作った料理は〇〇すぎてまずい」など、それぞれの食の好みが原因で夫婦間に亀裂が生まれてしまうことも。
今回はそんな悩みを実際に抱えている夫婦に話を聞き、心理カウンセラーのガリさん先生が、それぞれにアドバイス。また、夫婦で食事を楽しむための注意点やコミュニケーションにおける対処法なども語ってくれました。
私は野菜たっぷりのヘルシーな料理やフルーツが好きで、夫はカツ丼やラーメンのようなガツガツとした油っぽいご飯を好物にしています。外食ではおいしそうに食べるのに、私の作ったものは残しがちです。仕方ないので最近、夫には外食で済ませてもらうように。出費もかさむし、健康にも悪そうなのですが、こればかりはケンカにもなりそうだから口出しできません…。(29歳/OL)
「二人とも食いしん坊で、こだわり強し」それを踏まえておくと心が楽になると思います。まずはお互いに食の好みは分かり合えないことを認めましょう。「よくそんな油っこいもの好きだよねー、分からんわ(笑)」と言ってみたり「(食の好みが)まるっきり逆だねー、よく夫婦やってるわ(笑)」と笑ったりすれば、これまで問題だと思っていたことが笑い話になるはずです。
「これが今の自分たち夫婦のかたちなんだ」と思えればいいのです。そのうち彼も年を取り、だんだんと体にいいものが食べたくなるかも。そのときになったら、「昔は別々に食べてたのに変わったよね、年取ったね(笑)」なんて、笑い合うことになるでしょう。
もしあなたの実現したいことが、手料理で旦那さんに喜んでもらいたいということなら、彼が外食するときの食事を写真に撮って見せてもらいましょう。もしくは、普段から何を食べているのか聞くこと。その際、心配や意見を言わないことが重要です。
そして写真や会話の中に、あなたが食べてみたいと思うものを探してください。共通するメニューが見つかったら、家で一緒に食べようと誘えばいいのです。ふと、旦那さんの好きなものが思い浮かび、自分もそれを食べたい気分だと感じたならチャンス。その気持ちを彼に伝えてください。
旦那さんが好きなもので、かつあなたが食べたいものを一緒に食べる約束を取り付ける。それが実現すれば、二人とも満足する食卓になります。普段の食事は別々でも、今一緒にできることがあるはず。その瞬間をめいっぱい楽しみながら、時間と共にそれが増えていくといいですね。
我が家は3世帯で暮らしていて、料理の担当は義母か私です。健康面を考えて、料理はなるべく薄味で、素材を生かした和食をメインに出しています。ただ、これが家族(特に夫)から不評です。そのせいで「ちゃんと味付けした?」「病院食みたい…」と子どもや義母にまで文句を言われる始末。目の前で醤油や塩をわざわざ足されると複雑な気分になります…。義母の味付けが濃いからかもしれませんが、文句を言われるのは自分の腕が悪いからなのかと、落ち込んでしまいます。(37歳/主婦)
素材の味を生かして健康にいい料理を作っていても、まわりの反応がそれでは落ち込むかもしれません。しかし、決してあなたの腕が悪いわけではなく、家庭ごとの食文化の違いだと理解してください。
ご家族は濃い味付けの食事で育ち、今もそれが好きなだけ。薄味をおいしいと感じる文化を持っていないのです。料理の味は生まれ育った場所や家庭の伝統に強く左右されます。塩や醤油、出汁それぞれにも違いがあるので、昔から親しんできた味以外には、どうしても違和感が生まれがちです。(関東生まれの私の場合、関西風の薄味のお店で醤油差しがなかったときのショック…今でも忘れられません。笑)
ご家族もそのような慣れていない味への困惑があるのだと分かってあげることが重要です。
ひとまずは、ご家族に今の彼らでも舌でおいしいと感じる薄味の料理を作ってみてください。そして、最初は醤油をドボドボ足したとしても、彼がおいしく食べることを許してあげましょう。
そのうち、健康や文化を抜きにして「これはうまいね」と感じる料理に出合い、だんだんと薄味のおいしさを分かってくれるようになるはずです。それまでご家族を満足させてあげながら「薄味のうまさが分かったよ」って言われる日を楽しみに待ってみてください。
あるいは濃い味付けの料理をお義母さんや旦那さんに任せ、あなたの料理と一緒に食卓にのるよう協力してもらうのも手だと思います。
結婚して1年ほどですが、妻の好き嫌いが激しいので一緒に外食には行けません。特にアレルギーがあるわけではないのですが、子どもの頃から嫌いなものは手を付けないようにして過ごしていたそうです。さすがにレストランでの食べ残しは気が滅入るので、今は外食を諦め、家で彼女の好みに合わせたものを自分が作っています。料理するのは苦ではないですが、たまにはディナーデートをしたいと思うこともあります。(34歳/販売)
奥さんは嫌いなものを食べ残すことに罪悪感のない人です。なので、あなたが彼女のために「食べ残す必要のないお店を見つけたよ」と言っても、彼女にはあまり響かないでしょう。「残さないで全部食べたね、うれしいな」と言ってもピンとこないと思います。奥さんは、出されたものは残さず食べるという価値観より、食べたいものだけおいしくいただくという価値観の持ち主ということですね。
「好き嫌いせず、なんでも食べて残さない」を良いこととして教育されてきた人が多いので、奥さんの行動は異質なものに見えるかもしれません。裏を返せば、好き嫌いをハッキリ表現できる彼女のスタイルに、魅力を感じることもあると思います。
奥さんは固定観念から自由になる先駆け的な役割ができる存在かもしれません。彼女の価値観と魅力を大切にしてあげてください。
★問題解決のポイント★「自分がガッカリしないディナーコースを組み立てる」
あなたの希望は、たまにディナーデートをして奥さんが食べ残しているのを見ずに気持ちよく食事を楽しみたい、ということですね。であれば、奥さんの嫌いなものを使わずに料理を提供してくれるお店をリサーチしてみてください。
普段、奥さんの好きなもので料理を作っているあなたなら、そんなお店を探せるでしょう。また、好き嫌いに喜んで対応してくれるお店に協力してもらう方法もあります。
これは奥さんのためにするのではありません。あなたが食べ残しを見てガッカリしないディナーデートを実現するため。つまり自分の望みを叶えるためにすることです。どのようにデートを組めば実現できるのか、ゲーム感覚で楽しんでみてください。
2015年に調査された「夫婦と食」に関する意識アンケートでは、全体の8割以上の夫婦がコミュニケーションをとるタイミングを「食卓を囲むとき」と解答しています(引用:株式会社Rinnai・夫婦と食に関する意識調査)。さらに共働き夫婦の場合でも「会話や一緒に過ごす時間をとる」や「一緒に食べると、より食事がおいしく感じる」といった理由が上位に挙がっているそうです。食卓は単に食事をとるだけの空間ではなく、家族間の交流のための場所だといえます。
それだけに食の好みがきっかけで会話が弾まなくなったり、ギスギスした空気感が生まれたりするのは問題。まずは食に対しての意識を確認しあい、献立の方針や家事分担を決めることが重要です。また「お互いの好き嫌いを強く意見しない」「家族が気持ちよく過ごせる妥協点を探る」といった配慮も必要でしょう。
ガリさん先生によれば「食卓ではときどき一緒に楽しめればいいのです。その機会がどれだけ奇跡かを感じてみることが大切」とのこと。義務感で無理に毎日食卓を囲むのではなく、自分たちが楽しめると思うタイミングで向き合ってみるのもいいかもしれません。まずは、自分たちのライフスタイルに食事をどう取り入れるかを考えてみてはいかがでしょうか?
ガリさん先生茨城県水戸市在住の心理カウンセラー。専門分野は、恋愛・家庭・人間関係。