「新卒1年目、先輩から“社長が趣味でやっているバンドのライブ応援にみんなで行くから、週末は空けておいて”と言われたときは、思わず“は?”と聞き返してしまいましたね。社員は全員参加する恒例イベントで、もちろん、行きませんなんて言える雰囲気じゃありません。休みの日に、給料も出ないのに、うまくもないバンドを聞きながら、みんなで声を枯らして社長を応援する光景はなかなか見物ですよ。今はもう慣れましたけど……」
(男性/30代/IT)
プライベート浸食型のブラック企業のようです。そんなふうに社員に応援されて、社長さんはうれしいものなのでしょうか?
「うちの会社はめちゃくちゃ飲み会が多いです。その割に参加費は自腹で、管理職も非正規も一律同額。私は小さい子どもがいるので、当然行けるわけがないのですが、断ると“本当に来ないんですか?”と驚かれて、何度も確認されたのは閉口しました。しかも、お世話になった方の送別会ということで参加したときは、二次会でイントロドンが始まって、思わず笑っちゃいましたよ。色々な意味で、時が止まってますよね」
(女性/20代/事務)
ブラック企業の話で「飲み会強制参加」はよく聞きますが、その類の方々はなぜあんなにも飲み会が好きなのか?謎です。イントロドンの選曲も70年代のにおいがしますね。「喝采/ちあきなおみ」なんか歌うんでしょう。目に浮かびます。
「数年前の社員旅行の夜は乱痴気騒ぎでした。アキラ100%が流行っていたので、若手男性社員が数名、その真似をしていたところまではギリギリ許容範囲だったのですが……。途中からなにも隠さず裸を見せびらかし、ほかの社員は大爆笑。女性社員を含めて、引いているのは私一人だけでした」
「翌朝以降、酔いが覚めた社員や幹部たちから何度も謝られましたが、良識的な社長はその場にいなかったので、私が告げ口したり問題にしたりしたら、まずいことになると思ったのでしょう。笑っていた女性社員からも“空気が悪くなるからマジにならないで”と言われて、ああもうダメだなあと思いました」
(女性/20代/営業)
ダメですね。その場の空気よりも大事なものはいくらでもあります。セクハラの線引きは人によりますが、異性に全裸を見せつけるのはどう考えてもアウトでしょう。このように多くの社員がモラルを失ってハラスメントに加担している場合は、外部の力を借りるかあるいはご自身がそれに染まる前に、会社から脱出することをおすすめします。
「大学時代2年間アルバイトをしていた会社に新卒で採用されました。出来上がった名刺をわくわくしながら見たら、“副編集長”の文字が。なにかの間違いかと思いましたが、今日からそういうことなのでお願いしますと。何度も荷が重い、1年目では無理があると訴えても聞き入れてもらえず、“副編集長なのだから”といきなり部下を持たされたり、研修期間もないまま、一人で案件をいくつも担当したりしました」
「もちろん社外には1年目だからと言い訳できないし、名刺を見た人からは“あの歳で副編集長なんて社長の愛人なんじゃないの?”と陰口を叩かれましたね。立場が人を作るって、こういうことじゃないと思います」
(女性/20代/マスコミ)
すごい会社もあるものですね。教えるべきことを教えないのも、立派なハラスメントです。また、「頼りにしている」「あなたに任せたい」などという精神論で本人のモチベーションにつけこみ、過分な負担を強いることも「やりがい搾取」と言うべき暴力ですよ。
「会社の経営が傾いていることは薄々気づいていたのですが、社長のお人柄を慕っていたので、ついていきたいと思っていました。しかしある日、突然役職順に横に並べと言われて、現場のトップの方が社長から“月いくらあれば生きていけるんや?”と。そしてその方がなにを思ったか大真面目に“7万円です”と答えて、本当に給料が7万円になりました。しかも、僕を含めた下っ端が上司より高額な給料をもらうわけにいかず、全員7万円に……」
(男性/30代/教育)
ただ生きる「だけ」なら7万円というのは確かに絶妙な額かもしれませんが、なぜ馬鹿正直に答えてしまったのでしょうか……。横一列に並ばされて自ら給与を決めさせられる光景はかなりシュールですね。迷わず専門の機関に相談に行ってください。
いかがでしたか?ブラック企業の「アウト」なところは、残業代未払いや言葉の暴力によるパワーハラスメントなどのわかりやすいものだけではありません。働く側も正しい知識と権利意識を持ち、少しでも「あれ?おかしいな?」と思ったら、自分が搾取されていないか、よく考えてみましょう。すでに染まってしまった人たちに囲まれていると流されてしまいがちですが、あなた自身の「あれ?」と思う気持ちを大事にしてくださいね。