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「結婚したいというより回収したいのかもしれないという話」

「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝し、名実ともに国民のヒロインとなった『3時のヒロイン』。普段はネタ作りを担当し、ゆめっち、かなでをツッコむ福田麻貴が、女という生き物に対してツッコミを入れる、女の生態コラム。

当たり前を失ったあの日

10代の頃、将来結婚したいなどという夢がさらさらなかった。したくないわけでもないが、したいわけでもない。恋愛体質じゃないし、大人になっても自由でいたいとか、仕事を頑張っていたいとか、それくらいの感じ。そんな私に結婚願望が芽生え始めたのは確か22~23歳頃で、きっかけは多分、21歳の時に父が亡くなったことだろう。

子供の頃、家族で各々の夜を過ごしていて父が突然「コンビニいこか!」と言い出したときの団結感。チャルメラの音が聞こえてきて買いに走ったり、外食のあとに「ゲームセンターいこか!」と父が言い出したときのあのワクワク。そんな日常を一切失ってしまったことに、父が亡くなってすぐには気付かなかった。だって父が亡くなる前からもう兄は家を出ていたし、私も大学生になって忙しかったし、そもそも当たり前にある「家族」を意識することがなかった。

家族への思いと現実の自分

私と母の二人暮らしが定着し「家族」というには少し面積の足りない形になってついに、ショッピングモールを歩く家族連れを見るとせつなくなるようになってしまった。ようやく芽生えた結婚願望は、本当に誰かを愛したいのか、今はなきあの団欒シーンを再放送したいだけなのか、もはやわけのわからない感情である。

その後私は芸人で売れるために上京した。お金もなければ友達もいない東京での一人暮らしという、「家族」とは正反対の方向に突っ走っていってしまった。一人でIKEAに行って家族連れやカップルの醸す多幸感の隙間をくぐり抜けながら家具を選び、配送料がもったいないので素手で机と椅子を持ち帰るも立川駅まで歩くのすら手が痛くて、置いては持ち上げ、置いては持ち上げ、しょげないでよBabyを脳内BGMに、半泣きで天を仰ぎながらカップルに追い越されて歩いた。

結婚を意識し始めた30代

厳しい生活と仕事にもがいた20代を経て30代に突入し、もうしばらくもがいてやがて私もどこかに落ち着くのだろうと、結婚を現実的に意識し始めたのが最近。理想の結婚相手像だって、気付けば少しずつ父に近付いてきている気がするし、子供番組を見たり、寒い夜にシチューのCMが流れるリビングで団欒したり、あの何でもない日常を母の立場から追憶したい。結婚という名の回顧の旅をしたいのかもしれない。と名言めいた夢を語ってられるのも実際のストレスを経験していないからだろうから恥ずかしい。

思い出の回収と再構築

老人は子供に戻っていくという話をたまに聞くが、わかる気がする。大人になって、子供の頃に夢中になったゲームやビデオや絵本を探してしまうことがある。または何かにつまずいたり、自分と向き合いたいときも、子供時代の中に答えがあるのではないかと探す。

幼少期は大人に向かう途中ではなく、幼少期がすでにゴール。そんな感覚だろうか。子供時代にばら撒いてきた思い出を、愛する誰かと回収しながらまた新しく作っていく、私のそんな日々はいつになるのか見当がつかない。

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福田 麻貴(3時のヒロイン)
お笑い芸人
2016年結成の女性トリオ「3時のヒロイン」のツッコミでありネタ作り担当。「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝。現在CX「ウケメン」や様々なテレビ番組で活躍中