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原田ちあきの人生劇場「自分はどうしてこんな親の元に生まれたんだろう」

更新 : 2021.10.19 18:00 / 作成 : 2021.10.19 18:00
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イラストレーター・漫画家の原田ちあきが皆さんの相談に答えてみたり一緒に悩んだりするコラムです。
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こんにちは。
家族についての悩みって、人間関係である事は変わらないのに、何となく他の人に打ち明けられなかったりするよね。そんな人に話しづらい悩みを打ち明けてくれてありがとう。

あなたのお悩みを私なりに真剣に答えていくね。

あなたはすごい

まず相談内容を読んで思った事はあなたはすごいっていう事。
高校三年生で「自分の人生が自分のもの」だと気づいている子がこの世にどれぐらいいるんだろう。

少なくとも私が高校三年生の時はそんなこと想像もしていなかったわ。何となくやらなきゃいけないから勉強して、行かなきゃいけないから学校に行ってた。

「なんか周りが進路とか就職先を決めてたから~」「親が私を心配するから~」って何となくそれっぽい理由を付けて高校卒業後は歯科助手のバイトをした。理由は他のバイトを選択したら親が心配すると思ったから。

だから、まさか自分の人生の操縦席に座る権利があるのは自分だけなんて思ってもみなかった。

自分の人生はいつだって誰かがサポートしてくれて、誰かの助言で道を決めて、いざとなったら誰かが代わりに運転してくれるものだとばかり思っていたわ。そんなことなかったけどね。

きっと一生それに気づけない人だっている。
だけど、あなたはしっかりと自分の人生の操縦席に座っていて、だからこそ、お父さんのとる「家族を思い通りに操縦しようとする行動」にストレスに感じているんだね。

親も大人も本当は存在しない

私は若い頃、大人は「大人」っていう種類の生き物だとばかり思っていたわ。
大人はみんな正しくて、間違えなくて、しっかりしていて、尊敬されるべき存在なんだって心のどこかで猛烈に信じてた。

それから年を重ねて、社会に出て初めて理解したんだけど、「大人」なんて種類の生き物はこの世に存在しないんだよね。よくよく考えれば当然なんだけど、私にとっては結構ショッキングな出来事だった。

まず自分が「大人」じゃない。20歳を超えても大人っぽい化粧もファッションも分からないし、バイトではミスをするし、怒られるのは嫌だし、彼氏はできないし、全然思い描いてた未来の姿じゃなかった。

だって、10代の頃のノリでなにも勉強や努力をしなくても、大人になった瞬間なぜか超人的な力を発揮して完璧になれると思っていたんだもの!!
私は19歳最後の日の延長が20歳最初の日だなんて考えもしなかったの!

そこからだいぶ後に気づいた事なんだけど、私が「大人」だと思っていた人はできるだけ正しい道を歩くために「努力」をしている人たちだったんだよね。

進学するのも仕事を覚えるのも努力だし、スキルを身につけたり、お金を稼ぐのも、化粧を覚えるのも恋をするのも全部努力。みんな努力をして武器を手に入れていたのに、私は大人の持つマジカルパワーで何とかしているものだとばかり思ってた。おバカね!

でも、理由は違えど私みたいに大人になりきれなかった人って一定数いると思う。
親も同じで、子供を作って子供を産んだからっていきなり「父親」「母親」っていう生き物に切り替わる訳じゃない。

以前も似たような事を書いたことがあるんだけど、「大人」「父親」「母親」は生き物の種類じゃなくて、自分のカテゴリーを分かりやすく表現する為の記号でしかない。

あなたは「学生」で「未成年」だけど、学生っていう生き物でも未成年っていう生き物でもない。私は「女」で「イラストレーター」だけど、女っていう生き物でもイラストレーターっていう生き物でもない。

その人の持つ性格や人生は、その人の選び取ってきたもので構成されているだけであって、その人の振り分けられたカテゴリーで決まる訳じゃない。
だから素晴らしい子供もいれば、最低な大人もいるし、理想的な父親もいれば、子供のままの母親もいる。

あなたのお父さんは、カテゴリーでいえば大人で父親だけど、きっと子供のままでいることを選んだ人なのね。

子供は親を選べない。だけど

世間一般の思い描く家庭と自分の家庭に差があると、傷つかなくてもいい場面で傷つく事って本当にいっぱいあると思う。

「家族が嫌いな自分って変なのかな?」「家族が不仲っておかしい事なのかな?」「なんでこんな家に生まれたのかな」って悩んだり、勇気を出して相談をしても家族仲がいい人には相談内容を理解してもらえない事も多い。

だけど私が断言しますよ。家族の事は嫌いでもいい。
あなたとお父さんは血の繋がりがあるだけの別人で他人。

あなたが苦しい理由って、きっと「この人が父親だから」「私は娘だから」「私たちは家族だから」離れられないっていう思い込みがそうさせているんだと思う。
そう思える事ってとても美しいことだし、素敵なこと。

でも、あなたを苦しめるような関係ならそんな考えは捨てちゃってもいいのよ。
もっとシンプルでいい。あなたはあなた、お父さんはお父さん。別の生き物、だから他人。

同じ空間にいる他人がいつも不機嫌で、物に当たって、陰謀論を押し付けてくるの、冷静に考えて嫌だよね。嫌で当然。私だってきっと嫌だもん。
自分の気持ちを大切にしてくれない人と仲良くなるのってやっぱり難しいよ。

あなたはお父さんを嫌いになっていい。
今あなたが生きている場所はあなたの人生だからね。あなたの心を深く傷つけたり、悲しませる対象は突き放していいし逃げてもいい。そこに血の繋がりとかは関係ない。

あなたの心を守れるのはあなただけ。
苦手なものは苦手でいいし、嫌いなものは嫌いでいいんだよ。安心してね。

相手に嫌いな部分を伝える必要はない

最後に、イライラが限界に達すると、相手に何がムカついたかを伝えたくなるよね。
自分の怒りを正確に伝えて理解してほしいし、相手に改心してほしいから。

でも、イライラが限界の時ほど冷静になって!!
誰かと距離を置く時は、余計な波風は立てずに静かにゆっくり離れることをお勧めしたいの。

どんなに正論でも自分の事を否定されるとカチンと来てしまうもの。
現状を打開したくてお父さんに指摘をしたつもりが、逆に新しい火種になって、あなたが今よりお家にいづらくなってしまうかも。
あなたは今高校三年生で、きっと少なくともあともうちょっとは実家にいなくちゃいけない状態だと思う。

なら、実家にいる自分の心が一番穏やかでいられる状況作りを優先したほうがいい!

距離をあけるのはその後でも全然遅くないからね。
きっと今が一番苦しい状態だと思うけど、自分の居場所と心を一番に守ってあげてね。

あなたが書いてくれたように、あなたの人生はあなたのもの。
生きている限り苦しいことも辛いこともおきるけど、その時はできるだけハッピーになれる方向に操縦バーを動かしてね。コンビニでおいしいお菓子を買ったりね。

今日のあなたが昨日より幸せになりますように。


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原田ちあき
イラストレーター・漫画家
大阪在住のイラストレーター・漫画家。よいこのための悪口メーカー。書籍「手から毒がでるねこのはなし」「誰にも見つからずに泣いてるきみは優しい」等/連載「やはり猫にはかなわない」